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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第5章 はじめてのおつかい




「ごめんなさい、私一袋持ちます……」

「いいって、女の子なんだから自分大事にしときなさい」

「はい……」

「あとリク、お前も重かったら俺に言えよ。もう一つ位ならお兄さん軽々と持てるから」

「オレはいいですよ男だし」

「いいのかー?後でイチに怒られるぞー?」

「う、それは……わかりました、じゃあ軽い方お願いします」


こりゃ確かにお父さんだ。でも陸くん体弱いのかな?怒られるって言ってたけど……と言うかそもそもイチって誰の事だろう。


「あの……イチって?」

「ん?あぁ、一織だよ、和泉一織。イチ、ミツ、タマ、ソウ、ナギ、リク。呼びやすいだろ」

「そうなんですか」


でも一織くんは陸くんより年下なのでは、と言いかけて今朝のやり取りを思い出す。そう言えばすごいしっかりしてるもんね、割と想像するのは容易い。となると、ある意味お母さんは彼なのかもしれないなぁ。
そう言えば体の事を、と言おうと思ったところで事務所の隣の寮についた。


「ただいまー」

「あっ、大和さん、今おかえりですか?起きるなり散歩ってびっくりしましたよ……って、昨日の……」


白い髪をサラリと揺らし、逢坂壮五さんが大和さんの後ろの私達に気付く。


「改めまして瑠璃華御崎です、本日より寮と食事の管理をメインに働かせて頂く事となりました!よろしくお願いします、逢坂さん!」

「こちらこそ、僕達の手が及ばない範囲が増え、ご迷惑をおかけする事も多いかとは思いますが、何卒よろしくお願いします!それで、ええとその、逢坂さんって言うのはあまり呼ばれたくないと言いますか……それに年上に敬語を使わせるのも申し訳ないです」


すごいしっかりした子だ。品があって、育ちの良さが伺える。身に付けているものも1級品だし、相当なところの子なんだろうな、と思う反面。人を見た目や育ち、家柄で判断されるのが嫌なのかな、なんだか似た何かを感じる。


「うんと……じゃあ壮五くん、よろしく。私の事はお母さん位気楽に接してくれればいいからね?」

「!はい、ありがとうございます!」


この子は根っからの真面目なんだろう、しっかりしている。
キリッとした凛々しい顔立ちだが、ニコニコと目を細めて笑う表情はどこかあどけなく、可愛くて魅力的。

少しほっこりしながら私は買ったものを片付けに行った。

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