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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第4章 挨拶回りと初仕事




しかしまぁ、そんな事を言っていても今から境遇が変わる訳でも仕事が出来るようになる訳でもない。ほんの一瞬だけ浮かんだ皮肉には頭を振って今を取り戻す。

二階堂さんはじゃーなーと言いながら三月くんに手を振っていたので、私の揺らいだ表情は見えていない。


「御崎さーん!」


三月くんを送りに行くために外に出た万理さんが、玄関からヒョイと顔を出す。さっき別の撮影場所にナギくんを送ってきたばかりなのに、アイドル事務所って大変なんだな……。


「今日打ち合わせと撮影でナギくんと俺達の帰りは夕方位になると思うから、とりあえず今日の仕事として大和くんのお昼ご飯作ってもらえるかな!学生組も夕方まで帰らないけど、3時くらいには壮五くんが紡さんと事務所に戻ってくると思う!それまでに軽くお掃除しておいてもらえたら嬉しいです!」

「はーい!わかりましたー!万理さんもいってらっしゃーい!」

「行ってきます!」


通路奥から手を振ると、万理さんはニッコリと笑って手を振り返し、玄関の扉が閉まった。


「よし、ではきちんとした初仕事!頑張ります!二階堂さん、何食べたいですか?」


横で欠伸をしながら伸びている二階堂さんに仕事内容を聞く。
まだ眠いのか少し遠くを見ながら、あー、と呟いている。


「んじゃあ、あんたの得意料理で」

「得意料理??嫌いなものとかだったらどうするんですか」

「大丈夫、お兄さん大人だから好き嫌いしないし」


なんならビールとちょっとのつまみだけでもいいぞーなんて言ってる。真昼間からお酒だなんて……と切り返したものの、私もお酒は好きだから気持ち分からなくもないのがなんとも言えない。


「じゃあ今食べたいものの希望とかは無いんですね?」

「そうだな」

「わかりました」


簡単なやり取りをした上で、私は調理場を借りる事にした。
冷蔵庫を開けると、意外と物が少ない。後で買出しにでも行くかな。

とりあえずあるものを見てバランスのいい食卓を作れるように頭の中で構築する。

お米は炊いてある、ほうれん草は茹でてお浸しに、レンコンと大根、人参、こんにゃくで簡単な煮物を作り、お味噌には豆腐とネギを入れる。後は出し巻き卵に軽く大根おろしを添えて居酒屋風に仕立てて完成。

ま、こんなものか。時間に追われる生活をしていた為、手早い作業には慣れていた。

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