第4章 挨拶回りと初仕事
「ええと……自己紹介が遅れましたが、本日よりこちらで家事手伝いとサポートをさせて頂くことになりました瑠璃華御崎です。よろしくお願いします、二階堂さん」
「あー、よろしく」
挨拶もそぞろに私にもコーヒーを渡され、とりあえずすする。
「ありがとうございます」
「あんま堅苦しくしなくていいぞー」
同じようにコーヒーをすする二階堂さんはぼーっと窓の外を見ていた。これまだ完全に起きていないんじゃないかな。相当に朝が弱いタイプなんだろう、さっきのドタバタではキチンと開いていた目も今は半分位しか見えていない。
「万理さん、今日の瑠璃華さんのスケジュールは?」
「とりあえず皆への挨拶回りと、ってまぁそれも今大和くんの挨拶で終わったからこれから各部屋の説明、後は今日は割と自由にしてもらって皆に慣れてもらう事かな」
ふーん、と興味があるのかないのかよくわかんない返事のまま返すと残り少なくなったカップの中身をくるくると回しながら万理さんと話を続ける二階堂さん。
「普段オフに早起きなんてしないから時間余ってるし、俺が案内とかしてきましょーか?」
「いいのかい?確かに俺この後ナギくん送らなきゃ行けないから、そうしてくれるとありがたいよ」
「んじゃ、そーいうことで」
ちょっとぬるくなったコーヒーを飲み干すと、二階堂さんは立ち上がる。どうやら今日の案内役は彼のようだ。私も遅れまいと飲み干すと慌てて立ち上がる。
「あっ、カップ洗います」
「じゃー、ついでだしまずは事務所の給湯室案内しますか」
事務所のすぐ近くにある給湯室に案内され、洗うと言い出してくれた二階堂さんに仕事ですからとやんわり断りを入れてカップを洗った。
廊下に出ると、更衣室やレッスン室などをさらっと教えてもらい、寮へ。あっちがリクの部屋でこっちがミツの部屋、と寮の説明をしてもらいながら、移動する。
「そういえばお姉さんはうちに来る前何してた?22なら結構仕事慣れしてるんじゃない?」
「お姉さんってやめてもらえませんかね、お兄さん。そうですね、中小企業の微妙な立ち位置に居ましたよ」
それ以上は思い出すのも腹立たしいので口を噤む。
相手も相手で、ふーん、とまたしても興味の有無を問いたくなるような返事が返ってきておしまい。
これなら私も楽でいい。