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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第4章 挨拶回りと初仕事




転んでしまうと思ったのだが。


「なになになに、お前さんしっかりした見かけによらず案外おっちょこちょい?」


ちょっとびっくりしたような声を上げた本人は、左手で私の腕をつかみ、右手で私の腰を支える。向き合う形で軽く支えられてしまった私は、改めて声の主を見上げる。
眼鏡の奥でキリッとしている三白眼を驚いたように見開き、でもちょっと可笑しそうにしている彼は二階堂大和さん……アイドリッシュセブンのリーダーだ。
しかしおっちょこちょいと言われても原因はあなたでしょう、なんて思っても言えず、顔に出さないように謝罪を口にしておく。


「すみません……」

「いやいや、カワイイ子が来たって子供組が騒いでたから、どんなもんかちょっとからかいたくなっただけよ、ごめんなー」


広い肩を竦めてくつくつと笑う彼は、私をそっと離すと少しずれた眼鏡を慣れた手つきで直した。


「皆若くてカワイイ子にはしゃいじゃって……ほんとにお子様だな」

「確かに可愛いけど初日からセクハラなんて、彼女によくないよ、ましてや同い年なんだから」

「えっ万理さんそれマジで言ってます?」


呆気に取られる私を尻目に、いつもの事なのか飄々と話を進めているもどうやら私の事を年下だと思っていたようで。


「俺てっきり普通にマネージャーくらいかそれよりちょっと上かな、くらいに思ってた……なんか……うん、すんません」

「見た目子供っぽくてすみません……お兄さん」


先ほどの仕返し、と言わんばかり詰め込んだビジネススマイルとお兄さんのワード。


「お姉さんなかなかやるね」

「お兄さんには敵いませんよ」


何かしら似たものを彼から感じたものの、どこかで私は一番の試練は二階堂大和と言う男なのかもしれない、と本能で察していた。


「はいはい、親睦を深めあったようで何よりだよ。それにしても珍しいね、オフの日に大和くんが早起きだなんて」

「起こされたんですよ、ナギに」


はぁ、と大きくため息をついた二階堂さんは苦々しげに頭を振った。


「朝っぱらからマイプリンセスがどうとかでドンドン扉を叩いた挙句、わざわざ部屋まで入ってきて熱弁するもんだから追い出したところで目が覚めました」


本当ならまだ寝ていたかったのだろう、軽く目を擦りながらも渋々コーヒーを飲むことでなんとか体を起床へともっていってるらしい。
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