第3章 社長とアイドルと就職先
「では、説明しますね。」
とその後語られた内容はおおよそ最初の衝撃で吹き飛んでいた。
「アイドリッシュセブン……って、今巷で大人気の……ですか?」
「はい、そうです!さっきあった環さん、壮五さん、陸さんもメンバーなんです!」
え、やばい付け焼き刃の情報だから、顔まで覚えてない……そりゃやけにみんな可愛かったりかっこよかったり綺麗だったりと、整っているなぁと思ってはいたけど……アイドルだったとは。
「ごめんなさい、私仕事に精一杯で、さわり程度しか知らないんです……すみません、こんな人間この会社で働けないですよね」
あぁ、やらかした。全く、こんな事ならもう少し流行りものを勉強しておくべきだったか。
「……あの子達を見てどう思ったかい?」
社長がポツリ、そう聞いた。
「どう、ですか。あまり話はしていないですが、個性的で、でもしっかりしてたり素直だったり真面目だったり、表情もコロコロ変わるし見ていてとても面白い子達だなぁと思いました。
それ以上に、アイドルだと聞いて納得するくらいにキラキラしたものを持ってると思います。
今までは仕事しか見ていなかった私ですが、これからはあの子達のファンになりたいと思います、活動を画面越しに応援を……」
「じゃあ、画面越しじゃなくて身近に応援してみないかい?本当に仕事一筋で社会に出ていたんだろうね。立ち居振る舞いや気遣いもそうだし、君くらいしっかりしている人は稀だと思うよ。その真っ直ぐな姿勢を、同じくらい真っ直ぐな彼等の支えとして、仕事に活かしてもらえないかな?」
これは……もしかしてOKの方向で進んでるってこと?
「でも私、彼等のこと知ったばかりで……」
「これから知ってくれるんだろう?仕事しながら、真っ直ぐな彼等を真っ直ぐ応援してくれるなら全然構わないさ。仕事内容は、掃除や炊飯、一般雑務……あとは経理やスケジュール管理等も任せられそうなら頼みたいと思っている 」
恐らく本当に人手が足りないのだろう。アイドリッシュセブン、7人のアイドルを世に売り出しているにもかかわらず、マネージャーは紡ちゃん1人、経理は万理さん1人なのだと言う。
アイドリッシュセブンの活動を支える仕事、とても興味があるし、やりがいもありそう。自分が支えたアイドルが更に輝く姿……見たい。
答えは決まった。