第3章 社長とアイドルと就職先
「やらせていただきたいです……彼等をもっと身近に知って、応援したいです!そして、その支えになりたいです!」
「うん、その言葉待ってたよ」
ニコニコする社長の横にいた紡ちゃんと万理さんも顔を見合わせてパァ、と喜ぶ。
印鑑は持ち歩いており、この場で契約をすべて済ませた方が楽だろうな、と帰りに買った履歴書を早々に取り出して埋め始めた。
「いつごろから働けそうかな?」
「あっ、明日からでも大丈夫です、仕事の引き継ぎや整理整頓は昼間で終わらせてあります」
淡々と履歴書を書きながらその経歴を見て、幼い頃から過ぎてきてた苦い思いをふと感じ、少し眉を潜めたのは、誰にも気付かれていないようだった。
「じゃあ明日から頼むよ。紡君、万理君、御崎君の事よろしくね」
社長の声に明るい笑顔のままのふたりが返事をする。
「はい!」
「改めて、俺は大神万理、よろしくね、御崎さん」
「はい、よろしくお願いします!紡さん、大神さん!」
私はありったけのビジネススマイルで返事をするも、紡さんも万理さんも
「さっきみたいな感じで接してください!お姉ちゃんができたみたいでなんだか嬉しいんです」
「俺も名前の方が呼ばれ慣れてるから」
なんて言うもんだからちょっと気が抜けてしまった。
でも私もこれ位フレンドリーにはしてたから、気楽にしていいよと言われた後輩の気持ちがわかるような気がして、自分のやって来た関わり方は自分なりに間違ったものではなかったんだなぁ、なんて思い返すきっかけにもなった。
この職場ワクワクする。業務内容については帰りの車の中、もう一度総ざらい紡ちゃんと万理さん(結局この呼び方で落ち着いた)に教えて貰った。
基本的にはアイドリッシュセブンのいる寮と事務所の清掃や炊事、洗濯など、多忙になってきた反面疎かになりがちなところを主にして欲しいとのことで、出演や打ち合わせなどの時期が重なった時にはサブマネージャーとしてつくこともあるけど、それはあんまりないそうだ。
おおよそは家事のお姉さん、ってとこか。
家に帰ってからはぼうっと今日あったことを振り返ったけど、でも疲れからか本当に色々あったなぁ、と総合的にしかまとめられなかった。
自分の中で清算しきれてない事もある中で、ふと思い出す。
情報番組の占い、当たってたな。