第10章 歓迎パーティの波乱
ポカンとしている三月くんを見下ろしながら、私は違和感を感じる。
あれ?今まで三月くんに膝枕されていたから、見上げていたのに……?
今見下ろして……あれ?地に足着かないこの浮遊感、お酒じゃなくて私本当に浮遊……!?
「すごいよみつきくん!私空飛んでる!」
「ばーか、そっちじゃなくてコッチ見なさい」
また上から声が降ってきた。こんな脅かし方をするのなんて決まってる。
「やまとくん」
「はい」
「やまとくんも空飛べるの?」
「ははっ、お前さん状況掴めてなさすぎだろ」
言われて初めて自分の置かれてる状況を見る。
膝裏と、背中から肩にかけて腕が回され、大和くんとの顔の距離はほんの数十センチ。暖かいと感じていたのは大和くんの体温だったようで。
「!!やっ……!はな、はなし……!お、お、おろおろ、おろお下ろして!」
「あはは、オロオロしすぎ。嫌ですー、俺のマネージャーなのに他のオトコとばっかりイイことしてるんだもんなー」
「ごごご誤解!ごーかーいー!!と言うか!マネージャーだからってそんな……いいようにいじりすぎでしょう!!」
流石にちょっと恥ずかしくて、酔いが少し覚める。下で三月くんがボソッってなにか呟いたけど、降りようと暴れるのに必死で聞きこぼしてしまった。
「……おっさん、前から思ってたけど相当なヤキモチ妬き……?」
「ミツくん?今なにか言ったかな??」
「ナンデモアリマセン」
大和くんが何が威圧してたけどよく分からなかった。
とりあえず降りようと抵抗を続ける。
「うわっ、ちょっと、お前さん暴れすぎ……!やめ、手が滑っ……落ちるぞ!」
「ひゃ!?」
落ちるのは流石に勘弁!と必死にしがみついてしまった……けど、あれ?いつまで経ってもこない衝撃。
「……なーんてな、嘘」
「……っ!もう!いじわる!そっちの方が衝撃でかいからやめてよ!!」
私の反応を見てひとしきり笑った後、ある程度満足したのか大和くんはすんなりと私を下ろしてくれた。
はぁ、こんなのファンに叩き殺されてしまう。
酔いも半分以上醒めてしまった。けど、頬の熱が未だに取れないのはお酒のせい……にしておきたい。照れたとか意識したとか、マネージャーとして良くないから。
……まぁ、酔ってる間はこの冷静さも失われてたんだけどね……。