第10章 歓迎パーティの波乱
「ありがとう、それじゃあ日本酒かな」
「御崎さん渋いね!オレまだお酒とか分かんないけど、大人って感じする!」
「あなたはそう言う感性が子供なんですよ」
「言ったなー!オレより子供のくせに!!」
「精神年齢は十中八九あなたより上の自信がありますよ」
ぎゃいのぎゃいの騒ぐ2人を横目に、大和くんがそっと日本酒を注いでくれる。1口運ぶとほのかな米の甘い香りが鼻腔にひろがり、舌の上にはやや辛めのコクのある風味が絡まっていく。
「ありがとう、んー……染み入る~……」
「じゃあここで俺のお手製だし巻き卵でも用意するかな」
「えっ、大和くん料理出来るの!?」
「これでも俺キャラ弁とか作るの好きだぞ」
「キャラ弁……意外……」
「ほら、御崎用の出し巻き卵」
ドーンと出された出し巻き卵の他に、私の前に出されたのは星形のだし巻き卵。包んで作られた後にクッキーの型でくり抜かれたらしい。
「あはは、可愛い!」
添えられた大根おろしと醤油で頂く。
「味のバランスもいい……!大和くんただの引き篭もりだと思ってたけどちょっと見直したよ……!」
「ちょっとちょっと、俺一応アイドルだから」
「あ、そっか」
あはは、と盛り上がる周りに1度はムッとした顔を作ってみた大和くんだけど、すぐに綻ばせて笑い出しては酒をあおる。
相変わらずペース早いな……。
「ルリちゃん」
「ん?どうしたの環くん」
「はい、あーん」
「!?」
トントンと肩を叩かれ振り向いたら唐揚げをフォークに刺して私の方へと向けている環くんがいた。
「ほら、あーん」
「あ、あー……ん。……うん、おいひいよ」
恥ずかしかったけど、あまりにも真っ直ぐにこっちをみているので断りづらくてそのままフォークに口がつかないように食べる。口に運ばれたものの味は美味しかったのだけど、それよりも照れくささが勝って味覚よりも火照りの方が強かった。
「よし」
「よよよよしじゃないよ環くん何やってるの!!」
「?食べさせた。可愛かった」
「感想じゃなくて!」
「何、そーちゃんもやりたかったの?」
「っ!!いいい、いや、そんな失礼なことは……!」
「はい、そーちゃんも、あーん」
「あー……って僕が食べる方!?」