第2章 燭台切光忠の話 【二振り目】
夜に眠って、燃えるよりはマシかと思ってね。
昼夜逆転した生活をしていたよ。
昼間は時間を見つけては一人眠って、悪夢に跳ね起きる。
夜は明かりを絶やさずに、陽が昇るのをひたすら待つ。
眠っていると分からないけど、夜って本当に長いんだよね。
昼間なら色んな音がして気がまぎれるけど、夜はね。
…音がしなんだよ。
時間が止まっているんじゃないかって不安になる。
誰の声も、足音もしない。
昼間と全く違う本丸にるんじゃないかって。
とても…とても不安になるんだ。
ははっ。
君の前でこんなこと言うのは恰好が付かないかな。
でも、本当に…怖いんだ。
僕は昼間の居眠りのまま、夢を見ているんじゃないのかって。
醒めたと思っていたのは気のせいで、本当はまだ夢の中に居るんじゃって。
…大丈夫だよ。
それも朝になったら気もせいだったかって、気付けるからね。
そんな生活をしていると、不思議なもので慣れてくるんだ。
昼間に見る夢で、段々と男の言っていることを、目が覚めても覚えているようになったんだ。
「君だけズルいじゃないか」
「どうして一人だけ」
「自業自得だよ」
覚えている部分は噛み合わないけれど、男は僕に対して嫉妬に似た感情を抱いているんだなって分かってきたんだ。
だから僕は彼に対して会話を試みようとしていてね。
それからしばらくは頑張ったよ。
でも…ダメだって分かったんだ。
彼は僕に何度も言っていた。
「君だけズルいじゃないか」
その言葉の意味が分かってきたんだ。
僕たち刀剣男士は色々な本丸に顕現しているだろう?
それは色んな説があるけど、たぶん本体を依代にしているんだろうね。
だから、どこかの本丸で僕が折れても他の本丸の僕には被害がない。
きっとこの男は…どこかの本丸で悲惨な目にあった刀剣男士じゃないかなって。
…時折聞くよ。
良くない審神者のもとに顕現された刀剣男士が居るって。
……君は謝らなくていいよ。
君は何も悪いことをしていないのだから。
胸を張っていてほしいかな。
満たされている僕が彼に何を言ったところで、彼には届かない。
そう思ったとき。
なんて言えばいいんだろうね。
夢の中だけでも、彼の傍にいてあげたいなって思ったんだ。
それからは昼に見る夢で、彼と言い争うことはなくなったよ。