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刀剣男士で百物語

第1章  小夜左文字の話 【一振り目】


夕方になってからです。
門の半鐘がけたたましくなりました。
…そうです。
第二部隊、第三部隊の短刀たちが皆、重傷で帰城しました。

みんなボロボロでした。
とても強い敵がでたと、一言言って崩れ落ちる彼らを僕も一緒に手入れ部屋に運びました。
あなたは札を使って手入れを回してほしいと僕に行って、他の短刀を抱えに行きました。
…覚えていますか。
そうです、僕に手入れを任せた晩。

僕は次々に運び込まれる短刀に、手入れ札を当てていきました。
みんなボロボロなのに、手入れをする僕に感謝の言葉をかけていました。

第二部隊の手入れが終わった時でした。
…はい。
また、あの昼間の笑い声がしたんです。
みんなを寝かせている隣の部屋から。
人数も同じ。
五人から七人のあの笑い声。
ひそひそとこちらを窺っているような感じでした。

でも僕は部屋に運び込まれてくる彼らの手入れが優先だと判断し、その声を無視しました。

…え。気にはなりましたけど…。
あなたも手入れを優先しますよね。
僕も同じです。


あなたが第二部隊の最後の短刀を部屋に運んだ時も、その声はしていました。
でも、あなたは僕に「もう安心だな」というだけで、声については一言も言いませんでした。
その時僕にはハッキリと聞こえていましたから。

「どうする?」
「だれにする?」
「だれをつれていく?」
「ほら、みんなしにかけだ」

ハッキリと、大きな声で話していたのに。
あなたは何も言わなかった。
だから、僕はこの声は聞いちゃいけない声だと思いました。

その晩、僕は寝ずの番をあなたに言いました。
…そうです。あなたには聞こえていなかった。だからあなたの手には負えない。
間違っていましたか?
…いえ。僕も刀剣男士ですから。

その晩はとても長い夜でした。
本当に長い夜でした。

声はずっと聞こえていました。

「だれにする?」
「しんじゃうね」
「まだしなないよ」
「もうすこしだよ」

終わらない会話に僕は息を殺して黙って座っていました。
勿論自分の刀を握って。

隣の部屋の声は止まりませんでした。
ずっと話していました。
手入れが済んだ短刀たちはみんな眠っていました。
ちゃんと全員の呼吸も確認しました。

声は続きます。

「どうする?」
「でもほら」
「そうだね」
「ねぇねぇ」

その声は明らかに僕に向けていました。
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