第1章 小夜左文字の話 【一振り目】
怖い話を聞かせてほしい?
…あなたがそれを望むなら。
僕がここに来たばかりの時です。
僕の錬度が低いこともあり、出陣は稀でした。
大体畑当番をしたり、馬当番をしていました。
…他の刀との錬度の開きを不安に感じたことはありません。
必要な時に必要とされる。
それが今までの僕でしたから。
ある日、畑当番は僕一人でした。
当番表を確認しても、名前は僕だけでした。
…はい。あの日はたしかに僕の名前だけでしたよ。
僕は特に気にせず当番の仕事をしていました。
作物の水やりに、草むしり、農具の手入れなど。
一人では大変でしたが、その日も僕は出陣がありませんでしたから。
夕餉までに終わらせる事が出来ました。
刃を研いた農具を倉庫に片づけようとした時です。
誰かの話声がしました。
その日は何か新しい戦場が解放されたと言って、あなたも他の刀も殺気に満ちていましたから。
第一部隊から、第四部隊まであなたが編成しなおした日です。
…そうです、その日です。
僕のほかに刀は居なかったはずでしたから。
その話声はどうやら倉庫の中からでした。
声の感じは子供だったと思います。
僕はあまり他の刀とは仲が良くないので…。
声だけでは誰が話しているのか分かりませんでした。
その声は人数だと五人から七人ほど。
小さい声で話していましたが、人数が人数ですから。
気になる程度には漏れ聞こえていました。
何か楽しいことを話していたのか、クスクスと笑い声が漏れていました。
何が面白いのかは分かりません。
僕にはその声しか聞こえなかったので。
農具を片づけようにも、あまりに楽しそうにしていたので僕は後で片付けようと思い、倉庫の傍に農具を置きました。
その時です。
どんっと大きな音が一つ、倉庫からしました。
その音は扉を思いっきり叩いたような、蹴ったような音でした。
もしかしたら僕が傍にいたのに気が付いて、慌てて隠れようとしたのかなと思ったんです。
悪いことをしたなと思い、静かに離れることにしました。
でも、その倉庫の声は帰る僕の背中に大きな笑い声を向けたのです。
まるで馬鹿にしたような笑い声でした。
ここにきて日の浅い僕でも聞いた事のないような、腹の底から他人を馬鹿にした笑い声でした。
気味が悪いと思い、その日は倉庫に近づきませんでした。
