第1章 バレンタイン抹消計画
暖かい空気があちらこちらに漂い始め、冬が終わりを告げようとしていた
いつもなら年に降るか降らないかの雪も今年は2〜3回は降った
それでも積もりはしなかったが、
2月に入った今もまだ寒さは残り、コートやマフラー、手袋を身につけ登校する生徒も少なくはなかった
「今日も寒いな」
コートを着込み寒そうに身を縮こませる少年────否、青年の夜久衛輔は隣の幼馴染みに同意を求めるかのように視線を向けた
「そう?結構暖かいと思うけど」
しかし、同意を求められた少女、涼香桐崎は不思議そうに首を傾けた
「お前は年中そうだったな」
やれやれと肩を竦める夜久
前述の通り、夜久は分厚い茶色のコートに同色の手袋、マフラーを身に着けていた
しかし、それに反し桐崎はコートも手袋もマフラーもしておらず、制服を着ているのみ
中にセーターすら着ていないのだ
涼香桐崎は大の暑がりであり、冷え性である
夏にはクーラーをつけた挙句、自分の頭に向けて扇風機を当てる始末だ
しかし、冬には滅多に着込まず、長袖を着ていたとしてもその下には半そでを着込み、暑くなればすぐに脱ぐ
そのため、彼女は体育の時間にジャージを持ってこない
体育の時間は大して必要でないので着ない
そして、バレー部の副主将である桐崎は最低限しかジャージを着ない
「お前、今日部活来ねえ方がいいぞ」
唐突に何か思い立ったかのようにはっとした表情の夜久が言う
「え?」
一瞬、桐崎は怪訝な顔をするがその後すぐに「あぁ...」と、小さくつぶやくと虚空をふと見上げいった
「バレンタイン....か」