第1章 裁縫の達人(瑠璃川幸)
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顔が一気に熱くなる。
今、私、幸くんにキスされた?
そんな様子を幸くんが、いつもの、余裕のある顔をして私を見る。
「なんて顔してるの?可愛い、カントク」
「ゆ、幸くん!茶化さないで!」
「茶化してないよ?男が女に服を贈るって、脱がす為なんだってよ?オレはまだ中学生って思ってると痛い目見るからね、いづみ?」
ボン、と頭が沸騰した。
中学生に踊らされてるなんて…って思うけど、こんなに可愛くてかっこいい彼氏になら、踊らされてもいいかな。
「じゃあ今日は愛を深めたって事で、バターチキンカレーにしよう!濃厚だよ!」
「またカレー…」
目を合わせて2人で笑い合う。
私たちは、そっと手を繋ぎながら中庭を後にした。
end