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新人さんと新人くん[声優]

第1章 新人さんと新人くん


「よう、杉田」

「あ、中村」

ひょこ、と現れた中村が俺に言ったのは、とんでもない一言だった。

「名前ちゃんちゃん、来てる?」

その一言に、俺の表情が固まる。

「え?」

なんで、彼女?

「あー…。来てるっちゃ来てるよ」

ぼけっとする俺を置いて、彼女のほうへ向かう中村。

「おはよう、名前ちゃんちゃん」

「あ、おはようございます!」

おい、中村。

「今日、髪型変えたんだね」

「あっ…、寝癖が、すごくて…」

少し照れたようにうつむく彼女。

あぁ、かわいい!

もっと見たいのに、中村、お前近いぞ。
それに何話しかけてるんだ、こら。
といいたいけど、心の中でとどめておく。

なぜなら俺はヘタレだから。
二人が楽しそうに話している姿を見たくなくて、台本へと目を移す。
ないようなんか これっぽっちも入ってこない。
二人の事が気になって仕方ない。

「杉田さん」

その、柔らかい声に。
台本から顔を上げると、彼女が目の前にいた。

「あの、邪魔してすみません」

「え、?」

「今日、夜、お暇ですか?」

台本を落としそうになった。
だって、それは、もう。
もしかして、今、誘われてる!?

「その、杉田さんと、いってみたいお店があって」

「俺、と?」

「はい」

「中村ではなく?」

「え、中村さん?」

「だって、今、あいつ」

視線を、奥の中村に投げてみる。
中村は、してやったりの表情でにや、と笑った。
そのままグーサインをこちらに向けてくる。
神かよ、お前。
あとでいくらでも好きなだけ肉食わしてやるから。

「ご都合、悪いですか?」

「いや!悪くない!今日じゃないとだめ!!」

「え、そうなんですか?」

「そうなんです!」

あぁ、変な言い方になってしまった。
いや、俺にもうそれだけ余裕がないことなんだ。
後にも先にももうこんなチャンスはない。

「あの、でも、その前に」

「?」

「アドレス、交換しましょう?」

「っ、そ、そうですね!」

携帯を取り出す手が震える。
でも、緊張してるのはお互い様らしく。
彼女の頬は、リンゴのように真っ赤になっていた。
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