第1章 新人さんと新人くん
一生もの、なんてなかなか存在しないと思っていた。
そんな夢みたいなもの。
でも、そんな俺の考えを一瞬にして壊していった人がいる。
「おはようございます、杉田さん」
「!」
その声に弾かれたように振り向くと、彼女がスタジオの入り口に立っていた。
俺のほうをむいて、にこ、と笑っている。
かわいい!
そう心の中で叫びながら、緩みそうになる口元を引き締める。
「おはよう、名前ちゃんさん」
なんでもないフリを装って俺もそう返す。
名前ちゃんさん。
ぺこり、と頭を下げると、すばしっこくスタジオの中へ入っていった。
彼女は、ここの音響さんの1人だ。
今回のアニメのときからご一緒するようになった。
いわゆる、新人さんだ。
そんな彼女の仕事に打ち込む姿を見ているうちに、彼女の人柄にも触れて。
気がついたら、ということだ。