第1章 恋は黄昏と共に
「はーあ、女の子とお花見デートしたいなぁ」
トド松の独り言に、当然ながら反応するシコ松。
「ま、まぁ、セッティングして人数足らなかったら、参加してやってもいいよ?」
「ふふっ、前向きに検討しておくね」
「でも、いきなり出会いがお花見とかハイリスクかなぁ。まずは堅実に、図書館デートでお互いの趣味趣向を探ってからの方が会話が弾むかもしれないし、場合によっ」
「はい絶対連れてかなーーいっ!!」
なぁ、〇〇。
キミが俺を忘れても、俺が憶えてたらさ、あの時間はずっと残るだろ。
二人で過ごした証になるだろ。
「なんでそうなるの!?てか、おそ松兄さんが花見デートに食いつかないとかおかしくない?気味が悪いんだけど」
せっかく〇〇の思い出に浸ってたのに、チョロ松に水を差される。
「あ?べつにいつも通り元気一杯なのだー!!」
と、おどけながら鼻の下を擦れば、弟達は安堵の表情を浮かべた。
「ほんとだ。いつも通りバカだ」
「ふふっ、バカだね」
「言ってろ」
黄昏色に染まる桜を見れば思い出す。
色褪せないキミの笑顔。
淡くてほろ苦くて甘ずっぱい記憶の欠片。
「あーっ!おそ松にーさんの鼻に桜くっついてるー!!」
十四松に言われて気がついた。
「ん、今年も桜に懐かれたか」
「何そのファンタジー!?そんなキャラだった?」
「んだよトッティ、そんなに羨ましいならお前にも付けてやるぅ」
「クシュッ!!は、鼻の中やめぶクシュッ!!」
桜吹雪イン鼻の穴で悶絶するトド松を放置し、ポケットに手を突っ込みピュウと一笛。
口笛の音色が、桜の木々を通り抜け、そして夕暮れに溶けていった。
fin.