第1章 恋は黄昏と共に
それは、冬が通り過ぎ春の訪れを待ち焦がれる季節——なんてはじまり、俺には似合わねーな。
ダルくて眠くて暇を持て余していたある日、兄弟六人で競馬に行った。
三連単で勝負したらこれがなんと大当たり!
…だったんだけどねェ。
「いやー、予想だけじゃなく買っとけばよかった〜」
「惜しかったねおそ松兄さんっ。でもでも、ボクがお馬さんにがんばってってエール送ったのが届いたのかもーっ」
「トッティ、お前さんは自分だけ損失ゼロで僕らから搾り取ろうとしてただけだろ。競馬場で馬券一枚も買わないとか、何しに行ったの?」
「ふふっ、チョロ松兄さんは女々しくチマチマ買ったのに、一円にもならなかったね」
口に手を当てほくそ笑むトド松と、こめかみに青筋立てたチョロ松が火花を散らしている。
面倒だからとりあえず放置。
ひとっつも勝てなかった俺たちは、六色のパーカーを並べ、夕日を背に歩いている。
はぁーぁ、パチンコ行きたーい。馬券買ってれば当たってたっつーことは、なんか俺今日はツイてそうじゃん?
でも今三十円しかないし…。
てなわけで、
「みんな、パチンコ行かなーい?」
頭の後ろで手を組んで、ニカッと笑顔でみんなを誘ってみた。
だけどなんか、みんなの視線が冷たいような…。
「おそ松…この間貸した千円はどうなった?」
「え?借りてたっけ?」
チッ、覚えていやがった。
「お前っ!前もそう言って逃げただろ!ビタ一文貸さないからな!」
あーダメだこれ。カラ松は借金根に持ってて無理そうだな。
じゃあ気を取り直して、他のヤツを誘って金むしり取るか。
「んじゃあチョロま」
「僕はにゃーちゃんのライブチケット買って金欠だからパス!」
チョロ松が俺に手の平を向けてストップをかけた。
「……おれは猫に会いに行く」
「ぼくはねー、川で泳ぐ!」
「ゴメンねおそ松兄さん、ボクこれからカフェ巡りするんだ」
「んだよお前ら、付き合い悪いねェ」
弟全員にフラれ、俺はパチンコを諦め、チビ太のおでんを食いに行くことにした。