第7章 洒涙雨
「ねぇ、なんか気持ち悪いよ?おそ松兄さん 」
あの雨の日からもう1週間、この1週間の間に俺はインフルエンザで寝込んでしまっていた。やっとまともに動けるようになった俺に気持ち悪いという言い分は、いかがなんだろうなドライモンスター。
「ふっ、やっとデンジャラスなウイルスから生還できたというのに、なにか悩み事か?」
相も変わらずイタい発言をする我が家の次男は、俺からも他の兄弟からもガン無視を決められている。特に変わったことも無く、これといってなんの問題もないそんな日常だ。
「...それにしても、馬鹿は風邪ひかないって言うのに馬鹿でもインフルエンザにはなるんだね」
辛口なコメントを残す四男一松に、五男十四松がそやねそやねとエセ関西弁で合いの手をいれる。
「あのさ、平日の真昼間だよ!?ねぇ?僕らもう20越えてるんだよ?!こんなんでいいの!?」
自分だけ真人間であろうとするライジングチョロシコスキーが、今日も今日とて鬱陶しい。
「それにしても、インフルエンザにかかってんのに雨の日に新台入荷だからってパチンコ行くのってどうなの?本当、おそ松兄さんはニートを極めてるよね」
スマホをいじりながら笑う末弟ことトド松の一言、いつもならそんなふうにいうなよーなんて軽いノリで言うのに、なんだかそんな気分じゃない。
あの雨の日から、どうにも気になる盲目のあの子。
無事に家につけたろうか、また誰かにぶつかって無いだろうかと晴れた空を見上げて想う。
「あの時の声は傑作だったよねー、なんかなんか、おっさんみたいな声だったもんねー、んんっんっ!まづのおぞまづでーす!」
パタパタと長い袖を揺らしながら、あの日の俺のダミ声を再現する十四松に皆が爆笑していた。自分の事がネタに上がっているのに、俺は蚊帳の外だ。
「なぁ、おそ松、お前本当に変だぞ?大丈夫か?」
そんな俺に心配して声をかけるカラ松、いつものイタさは何処へ置いてきたのか、心配そうな顔に思わず笑う。
「へーき、へーき!俺全然大丈夫だよん」
にゃははって笑ってみるけど、どうにもいつもの調子が掴めない。