第4章 怪雨
雨が面倒な日だった。こんな日はニートの俺は絶対に外に出ないし、家で寝てるに限る。でもその日は新台の入れ替えで、渋々外に出た。
「うわー、負けちゃったよ、外に出た損じゃんか!」
結果は見事に惨敗だ。
ちょっとボロっちい財布から朝にはあったはずの数枚のお札が、綺麗さっぱり消えていた。人生ってそう上手くいかないもんだななんて、肩をガックリと落しながらフラフラとパチンコ屋を後にする。
「あー、宝くじ当たんないかな」
数秒前まで人生そう上手くいかないって反省したはずなのに、もう甘い考えに切り替わる。これが俺のいい所。切り替えが早いのは大事、超大事。
「しっぶし!あー、寒っ!」
おっきいクシャミを一つしながら、安っぽいビニール傘をクルクルとまわす。朝から少し熱っぽい気がしていたけれど、新台入れ替えに参列するのはニートのたしなみであり、仕事みたいなもんだ。日本人ってワーカーホリックでしょ、なら仕事を休むわけにはいかない。
パシャパシャと濡れたアスファルトを軽く進みながら、少しオシャレな道に出る。俺にはどうにも合わないななんて思いながら、口笛を吹く。行きかう人はまばらだったけど、俺みたいにビニール傘さしてる人は、1人も見当たらない。まぁ、時間はお昼、しかも平日だしほとんどの人は働いてるだろうしね。
雨と雨の間をすり抜けるみたいに、家路へ急ぐ。子どもの頃にならした口笛は、今も健在で雨音にも負けない音を出す。
そんな時だった...。
カランと軽い音が近くで聴こえて、その音に振り返れば雨の中転がる白い棒。一目で目の見えない人の道しるべだとわかると、吹いていた口笛を中断する。
目線の先を少しづつかえていけば、女の子がおじさんに罵声を浴びせられていた。