第1章 宝物
それは手のひらに収まるサイズの小物入れだった。色合いは紺をベースに青と緑の糸で刺繍をされたシンプルながら味わいのある模様だが、どう見ても女性用には見えないのできり丸は不思議に思ったようで、が理由を話そうとした矢先、突然奥のテーブルに座っていた男性客が声を荒げ立ち上がった
『客の言うことが聞けないってのか姉ちゃん!?』
『で、ですからこのお店はそのような接客はおこなっておりませんので』
『ああっ!?んなの知るかよ、俺達は客だぞ、黙って隣座って酌しろってんだよ!』
『きゃぁッ』
4人の男が、店員の若い女性に絡み、酒の相手をさせようとしているようで、昼間だと言うのに既に酔いの回っている男達が無理矢理に女性店員の腕を掴み座らせようとしていた。
はたまらず立ち上がろうと腰を上げるが、きり丸に腕を掴まれ止められる。
『待って、相手は4人だし店の中で暴れでもしたら迷惑をかけてしまいます。』
『でも、』
『大丈夫だすよ、ほらあの人達諦めて帰って行きます。』
言われて見ると、4人が席から立ち上がり帰り支度をしていたので、はホッとしていると男の一人と目があい、にやついた笑みを浮かべられ、背筋が震えた。
会計へ向かう途中、すれ違い様にマジマジと向けられた視線から逃げるように顔を背けるを気遣い、きり丸が間に入り壁になってくれて、その小さくも頼もしい背中に驚くに、きり丸は笑顔を向けた
『安心して下さい、土井先生の大切な人は俺にとっても大切な人っすから』
『きり丸君・・』
『きりちゃん、格好いいねぇ~』
『な、何だよからかうなよ!』
そんなやり取りをしている間に、店から出た4人組がに目を付けていた事を、知るよりもなかった。
その頃、五年生グループはというと・・
『だから、何であんたがこんな場所にいるんだよ!?』
『ん~、なんの事かな?』
『とぼけるな、黄昏時城忍組頭、雑渡昆奈門!』
『お前達、待て!』
『えっ?』
『な、何でここにいるんですか!?』