第1章 宝物
『土井先生!?』
雑渡と五年生達の間に入って来たのは何と、学園にいるはずの土井だった。
土井の登場に驚きを隠せない生徒達とは違い、雑渡は察していたように笑みを浮かべていて、土井もまた溜め息を付いた
『今回は何が目的なんですか?』
『何の事かな』
『この期に及んでまだとぼけますか・・』
『本当に今回は任務ではないですよ』
『・・・・』
疑いを拭えない土井だったが、嘘をついているようにも見えず、悩んでいた時だった、伊作がかけてきたので自然と視線がそちらへ向くと、女装をしていた事を知らなかった土井は少々驚くが、伊作は状況が理解出来ずに土井に詰め寄る
『土井先生が何故ここへ!?と言うか雑渡さんまで!?やっぱりドクタケとの密会は本当だったんですか!?』
『善法寺少し落ち着きなさい!何があったと言うんだ?』
『実は先程・・』
伊作から経緯を聞いた土井と五年生達は敵同士であるドクタケの忍と黄昏時の忍が秘密裏に会っていた事に動揺を隠せずにいたが、雑渡は上の空で何かを考えるように顎に手を当てていた
『雑渡さん!説明して下さいッ!』
『・・伊作君が見たのは、ドクタケの忍とうちの忍で間違いなかったんだよね?』
『ええ、諸泉さんでした、変装をされてはいましたが間違いありません。』
『はぁ~・・忍たまの伊作君にあさっり見破られるとはな・・』
『雑渡さん・・?』
項垂れるように深い溜め息を付いた雑渡に困惑している伊作に、土井は落ち着くようにと肩を叩く
『そういきり立つな、雑渡さんの様子からして、悪巧みや結託を結んだとは思えない、心配はないだろう。』
『土井先生・・』
戦好きな城で、敵対している同士が秘密裏に会っていれば、心配になる気持ちは分かるが、土井は雑渡の様子から忍術学園に害をなす企みではないと察したようで、にこやかに微笑まれてしまうと伊作は何も言えなくなってしまった。
『・・で、伊作君がここにいると言う事は、今彼女の護衛は誰が付いているのかな?』
『・・!?』
『土井先生、今留三郎が一人で護衛に付いてくれているので、戻ります!』
『あっ、俺達も行きます先輩!』