第3章 Valentine
──降谷side
「……やっと終わった」
降谷は机を埋め尽くすほどあった書類の山を全て片付け、ぐーっと背伸びをした。
「これでやっと行ける……ん?」
の所に行こうと思ったが、よくよく考えてみれば遅れるという連絡をしていない。もしかしたら帰ってしまっているかもしれない。万が一いたとしても、かなり怒っているのは確実だ。
慌ててに電話をしてみるが、彼女は電話に出なかった。
「……ちっ!」
降谷は慌てて部屋を出た。もう待ち合わせ時間から2〜3時間は経っている。
もう帰ってしまっているかもしれない。そう思いつつも降谷は車を渋谷駅のハチ公前に飛ばした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──side
待ち合わせ時間から2時間以上が経過した。
「……まだ来ないなぁ」
いい加減もう寒くて凍え死にそうだ。ポケットから携帯を出すのも億劫になるほど、は寒さに震えていた。
と、そこへ。
「ねぇねぇ、そこの美人のお姉さん♪」
知らない男数人に声をかけられた。男達はの方を見ている。
「……私ですか?」
「そうそう、君だよ。ねぇ、ずっと1人でここにいるけどさ、もしかして暇なの?」
……何この人達。は嫌悪感たっぷりに言った。
「暇じゃないですよ。見ての通り待ち合わせなので」
「でもずっと待ち人来てないんでしょ?じゃあオレらと遊ぼーよ。今日寒いし、近くのバーで酒でも飲んでさー?」
ね、行こうよ。そう言いながら肩を抱かれる。「や、離して……」がその男の手を振り払おうとするが、そばにいた他の男達がの手を取る。
「いいじゃん?オネーサン美人だし、男慣れしてなさそーだし。ちょっとは楽しめそうじゃん?」
……頭にカッと血が昇った。
「……っ、いいから、離して!!」
力一杯抵抗するが、女1人が男数人の力に敵うはずがない。「やだっ、離して!」ずるずると引きずられ、車に押し込められそうになる。そこへ──
「何してるんですか?」
にこやかな、それでいて威圧感たっぷりの褐色肌の青年──安室がいた。