第3章 Valentine
──side
は警察病院に向かうと、桂羅の病室に向かった。
「桂羅兄……来たよ」
はそばにあった丸椅子に腰掛ける。
「今日ね、バレンタインデーなんだよ?だから一応……桂羅兄にもチョコ作って来たんだけど……。目ぇ覚まさないなら院長にあげちゃうよ?」
おどけてそう言うが、桂羅の瞼はぴくりとも動かない。
は彼が横たわるベッドに顔を埋めた。
「ねぇ……起きてよ……桂羅兄……っ」
どれくらいそうしていただろうか。
はふと起き上がり、携帯の画面を見た。まだ10分ほどしか経っていない。
「……行かなきゃ、だね」
はいつの間にか目尻に溜まっていた涙を拭い、桂羅の枕元にチョコを置いた。
「じゃあ……また来るね」
は未だ目を覚まさない桂羅にそう言い、病室を出た。
外はまだ6時だというのに真っ暗。はパタパタと走って米花駅へ向かった。
最後に渡すのは安室。
彼との待ち合わせ場所は渋谷駅のハチ公前、待ち合わせの王道だ。
「……来て、くれるかな」
は最後に残った1つを鞄に忍ばせ、ふふっと小さく笑った。