第3章 Valentine
──第三者side
が家に戻ると、門のそばに黒いシボレーが停まっていた。
は紙袋を持ったまま車に乗り込む。運転席には赤井が座っていた。
「お待たせしました」
「……遅かったな」
「ごめんなさい、知り合いにチョコを配り回ってて……FBIの皆さんのところ行くんですか?」
「ああ。俺達とお前が心置きなく会えるのはそこしかないと思ってな」
言いつつ赤井は車を発進させた。
は紙袋の中から箱を1つ取り出す。
「これ、バレンタインチョコです。……いつもお世話になってるので」
がそう言うと、赤井は少し驚いたように目を見張った。
「……え、嫌でした……?」
「いや……くれるとは思っていなかった」
「えっ、ひどい!ちゃんと知り合いにはみんな渡しますもん!」
ぷぅっとが頬を膨らませる。すると赤井はフッと小さく笑っての頭を撫でた。
「悪かった。……ちゃんと食べるから安心しろ」
「そういうことじゃないんですけど……まぁいいです」
そう言いつつも、は少々中っ腹の様子。
「他の方は何人いるか分からないので……とりあえず多めに持って来ましたけど……足りますか?」
「それだけあれば十分だろう。……ありがとうな」
「……!」
はぎょっとしたようにドアの方に後ずさった。「……何だ」今度は赤井が不機嫌そうに言った。
「赤井さん……お礼言えるんだ……」
「……何気に一番失礼だぞ、お前……」
そんな話をしながらFBIの所に着くと、はジョディやジェイムズなどのFBIの仲間達にチョコを配っていた(というか大箱に詰めたものを各自で取ってもらうという感じだったが)。
「……さて、用も済んだことですし、次の所行かなくちゃ。じゃあ、また今度」
「もう行くの?」
ジョディが驚いたように言った。はニコッと笑って言う。
「ええ。まだ後少し渡す人がいるので……」
「送って行きましょうか?」
「いえ、大丈夫です。タクシー呼びますし」
は周りの勧めも丁重に断り、そのまま帰って行った。
「よかったじゃないシュウ」
「……何がだ」
「彼女にチョコ貰ったんでしょ?」
ジョディがニヤニヤと笑う。赤井はそれを聞こえないふりをしてやり過ごした。