第14章 恋色に揺れるヨーヨー【瀬見英汰】企画作品
夏の暑さが本格的になってきたが、夜はまだ夜風が涼しいと感じられる。でもやはり、こもるような暑さは体に堪える
宮城は涼しい方だと言うが、暑いのにはかわりない
夏の風物詩と言えば夏祭り
私の町で毎年行われる小さなお祭りは地域の人々にとっては夏の楽しみのひとつである
「暑い、帰りたい」
そう言うと、友達が"せっかく来たんだから楽しめ!"と私の頭をひっぱたいた
祭りのあの独特な感じと、人が行き交う通りは暑さでどうにかなりそうだ
しかし、私だって祭りが嫌いなわけではない
通りに店を連ねる屋台や出店は私の興味をそそる
「イカ焼き買ってくる」
そう言うと、友達は"確かあっちの方に売ってたよ"と私たちから見て右後ろの方を指差した
そちらに目をやると大きな文字で"いか焼き"とかかれている。私はそこに向かった
友達はポテトを買ってくるらしい
幸運にも、今は誰も客が居ないらしい
私はイカ焼きを焼いているおっちゃんに声をかけようとした
「「あの、すみません.......!?」」
まさか、誰かと被るなんて思ってもいなかったので、驚く
そこに立っていたのは、同じ高校でしかも同じクラスの瀬見だった。服装は至ってシンプルで、きっと他人に選んでもらったんだろう
「あ....と、こんばんは....?」
瀬見「お、おう...」
お互いまだ状況が理解できていないが取り合えずイカ焼きを買うことにした
おっちゃん「へい、いらっしゃい」
瀬見「あーと、山田は何本買う?」
いきなりの質問に"へ?"と変な声が出たが、なんとか2本と答えた
瀬見「え、お前、一人で食べるのか?」
マジかみたいな顔をしながら言われたので、"んな訳ねーだろ。友達の分だよ"と半切れながら答える
瀬見「ごめん、ごめん...じゃあ、6本ください」
すると、おっちゃんは"はいよー!"と元気良く返事をして、テキパキとイカ焼きを焼いていく
すぐに6本のイカ焼きができた
おっちゃん「まいど~!」
お代と引き換えにイカ焼きを受け取った瀬見は2本を取り出して私に差し出した
瀬見「はい、お前らの分」
「え...いや、悪いって」
そう言うと、"このくらい男に奢らせろ!"とニカッと笑う瀬見