第13章 月と星が輝く夜に【武田一鉄】
「それじゃあ、このくらいにしますかね」
そう言って、武ちゃんは赤のボールペンの後ろを軽く"カチッ"と押した
「先生...やっぱり何回やっても分かんないよ....」
「うーん...理解力はあるんですけどね...数学は得意ですし...」
「文から抜き出すのとか全く分かんない...」
「そ、そんなに気を落とさないで下さいッ!きっと、山田さんならできますよ?」
武ちゃんはいい感じになだめてくれるけど、このままだと本当にテストヤバいよ....
今まで、本当にヤバいと思って自分で頑張った時もあった、けれど少ししか上がらなかった
それも、漢字とか....
授業中寝てる訳じゃないし、ちゃんと授業は聞いてる。友達関係とかにも影響はなし、どちらかと言うと空気は読める方だと思うし
「暗くなりましたね....あっ、そうだ、途中まで送るので、靴箱で待っててください。」
「えっ、悪いですよ!忙しいだろうし...」
「いえ、ちょっとバレー部のところに行くだけなのですぐ終わります。それに、こんなに暗くなるまで残したのは僕ですし。女子1人では危ないですよ?」
「そ、そうですか...じゃあ...」
そういって武ちゃんはバレー部のところに行ってしまった
私は帰る準備をしながら今日教えてもらったことを思い返す
線部の近くに答えがある。だとか、条件チェックをちゃんとするだとか...
基本的な事だけど、それでさえもちゃんとしなきゃ....
そして、靴箱で待っていると、五分位で来てくれた
「お待たせしました!いやーすみません」
「いえ!」
そして、2人で帰る
秋終わりごろ、空も澄んでいてとても寒い
肌寒い風が頬をかすめる
私たちの上では三日月が綺麗に上っている
「今日教えた文に、夏目漱石もありましたね」
「あぁ、そうでしたね」
私は問題を思いだす
しかし、夏目漱石って名前は知ってても、作品はあまり読んだことがない...