第15章 晒された本心(徳川家康/甘め)
「明日で一年なんだな」
藪から棒に、突然秀吉さんがぽつりと呟く。
俺は今、今後の安土領土の政の進行計画を話し合うために、秀吉さんの御殿へと来ている。あいつ(三成)も居るけど。
「何がです?」
唐突な呟きに意味がわからず尋ねた。
「何って、お前が迦羅と恋仲になってからだよ」
「は?」
この人はいちいち数えてるの?
「この間迦羅が言ってたんだ。もうすぐ一年だってな」
「もうそんなに経つんですね」
感慨深そうに三成がうんうんと頷いている。
「急に何なんですか」
秀吉さんと三成にそんな話をされると、何となく居心地が悪くて、適当に流すように返答する。
すると秀吉さんは、そういう何でもないような日が、大事な記念日になるんだと言う。全部、迦羅の受け売りみたいだけど。
迦羅の居た時代では、共に過ごしてきた時間を、一つの記念日として大事にするみたい。
俺はそんなこと考えてもみなかった。
一緒に居ることが当たり前になって、共に過ごす時間が一年だろうが何だろうが同じだと思っていた。
「で、何かしてやるのか?」
「何かって言われても、もう明日の話ですから」
正直今そんなこと知ったばかりだから、何をしたらいいのかわからない。特別なことをしないと、迦羅は、悲しむの?
思いつかないでいると、三成がわかった!とばかりに声を上げる。
「家康様も迦羅様も、私達にとって大切な人です。ですから明日はー」
「明日は?」
秀吉さんがひとつ身を乗り出す。
「皆で記念日をお祝いしましょう」
要するに俺達二人の記念日と称した宴をしたいわけなのね。
秀吉さんは少し悩むような顔をして
「しかしなぁ、二人の記念日だろう?俺達が居たんでは…」
どうやら気を遣ってくれているみたい。
本当は俺だって二人で過ごしたい気持ちはあるけど、何しろ初めてのことだからお祝いって言われても…
それに、迦羅も俺には何も言ってこないし。
「いいんじゃないですか。皆が祝ってくれるって言うなら、迦羅も喜ぶでしょうし」
三成の案っていうのが気にくわないけど…迦羅は皆のことも大事に思ってくれているし、悪い気はしないだろうと思った。