第13章 夢にまで見る君(伊達政宗/裏)
それから三日、迦羅を抱いていない。
その間も俺は毎日あの夢を見た。
ここまで心を侵されるのは、迦羅が最初で最後だろう。
この日、秀吉が迦羅と共に内情視察のため安土を発った。
数日であろうが、その姿を目にすることが出来ないと思うと、その身に触れることが出来ないと思うと、苦しい…。
俺は寝ても覚めても迦羅のことを想った。
「こんなことは、初めてだ」
止まらない恋情に自分が情けなくも、格好悪いとも思う。
離れている数日、何度も不安に駆られる。
今頃何をしているか
俺を想っているか
果ては秀吉と良からぬことになってはいないか
そんなことばかりが、ひたすらに頭を巡っていた。
二人が安土に帰還するー。
その報せが届いたのは、発った日から六日後のことだった。
夕刻になり、しとしとと雨が降り始めていた。
御殿を出て、城で待とうと足を向けた時、秀吉の声が届いた。
「政宗!頼む!」
馬に乗る秀吉は、具合いでも悪いのかぐったりとして身体を預ける迦羅を抱いていた。
「帰路の途中から雨に打たれて、熱が出たようだ」
城まで行くよりも俺の所で、と言う秀吉から迦羅の身体を受け取り、足早に御殿へ運ぶ。
雨に濡れた身体は冷えきっている。
女中達に着物を替えさせ、布団に寝かせた。
熱は高いようだ。
女中達を払ったあと、荒い呼吸をする迦羅のそばで見守る。
しばらくすると迦羅が目を覚ました。
「おい、大丈夫か?」
「政宗…ただいま」
不意に向けられた微笑みに妙な高鳴りを覚える。
いやいや、だめだ。高熱を出してるんだぞ迦羅は。
何を考えているのか、俺は邪念を振り払うように言い聞かせる。
「ったく、風邪ひいて帰ってくるなんてな」
優しく頭を撫で、心を落ち着かせる。
突然迦羅は、無理に力を入れて身体を起こそうとする。
「おい!病人は寝てろ」
慌てて抱きかかえた身体がその熱の高さを知らせた。
俺の胸にもたれた迦羅は、ひどく熱っぽい目で俺を見上げている…
だめだと言い聞かせたはずの心がまた疼き出す。
「こら。治らないぞ」
「でも…風邪は…人に移すと治るって言うでしょ…」
そう言って俺の胸にすがりつく迦羅は、誘っていたー