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【イケメン戦国】✿ 永遠の恋〜華〜 ✿

第10章 複雑な温度(顕如/甘め)


冷たい風に頬を撫でられ、寒さで目が覚める。


何処に居るのか一瞬わからなかったけれど、すぐに思い出した。
城から離れて、いつの間にか森に入って、変な人達に追い掛けられて…

そこまで思い出すと、背中にある温かな感触に気付いた。

ハッとして顔を向けると、この寺で助けてくれた人が私をじっと見つめていた。
何故か急に顔が熱くなり、慌てて顔を逸らす。
私のお腹の前で組まれた腕は、ガッチリと身体を包んでいる。

「あ、あの、すみません…寝てしまって」
「構わぬ」

どうやら腕を解く気はないらしい。
知らない男の人に…どうしよう…ちょっと、恥ずかしいし。
そんな動揺を感じていると声がかかる。

「まだ寒い。このままで良かろう」

まるで有無を言わせないような言葉だけれど、何だか少しだけ安心するような…。


「そう言えば、お名前は何と仰るんですか?」

今更ながら気になって尋ねる。
少しの沈黙のあと、顕如だ、と教えてくれた。

何だか何処かで逢ったような気がするんだけれど、思い出せない。




そうしていると、寺の外から声が聞こえてきた。
顕如さんに静かにするよう言われ、息を呑む。
次第に近付いてくる声は聞き覚えがあった。

「…政宗?」

そう呟いた瞬間、顕如さんは私を自分のほうに向き直らせて、何故か少し険しい顔になった。

「迦羅、私と此処で逢ったことは誰にも言うな」

諭すように言われ、素直に頷く。

そしてまた政宗の私の名を呼ぶ声が近くなる。


顕如さんは優しく私の手を握り、ふっ、と微笑む。

「また、きっと何処かで逢うだろう」

優しい顔で言うと握っていた手を離し、頬を撫でる。
そして、もう行け、と促されて立ち上がり、寺の戸を開ける。


「おい迦羅!こんな所で何やってんだ!勝手に居なくなりやがって。探すの苦労したぞ!」

眉を吊り上げ、心配したぞと怒り狂っている政宗の説教を聞きながら、一度中を振り返る。
そこにはもう、顕如さんの姿はなかった。

「聞いてんのか?戻ったらまた説教だからな」

「はい、覚悟してます」

清々しく笑顔で返事をする私に、わからねぇと政宗は呆れていた。



政宗の馬の背に乗り、想像を絶する説教が待っているであろう安土城への道を帰った。背中には、ないはずの温もりが、まだ残っているような気がした。








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