第84章 お菓子な恋愛模様(真田幸村/甘め)
「ねぇ、何処まで行くのー?」
「さっきからそればっかりだなお前」
「…だって教えてくれないんだもん」
「もう少しだって。ほら」
早く着いて来いと促すと
いじけたように唇を尖らせる。
「ん」
引っ張ってやろうと思って手を出すと
ニコニコしながらきゅっと握られる。
…ったく、可愛い顔しやがって。
わかってやってんのかよ、それ。
「しょうがねーな……」
「ふふっ。もう少し頑張る」
実は今、隣町に出来たと言う菓子屋に向かってるんだ。
すげー人気なんだってさ。
俺は良くわかんねぇけど
女は好きだから連れてってやれって。
(ついでに俺への土産も頼むな)
…結局あの人が食いたいだけなんじゃねぇのか?
「いいお天気だね」
「あ?ああ、そうだな」
さっきまで疲れた顔してたくせに
本当ひょうきんな奴。
「悪かったな、歩かせて」
「だって謙信様が馬連れてっちゃったんでしょ?それじゃ仕方無いよ」
「まぁそうなんだけどよ」
そうなんだよな。
朝早くから野外鍛錬だなんて言って
一部の兵と佐助を連れて行っちまった。
そのお陰でこうして迦羅を長いこと歩かせる羽目になったんだよな。
隣町までは春日山から徒歩で半刻程度。
馬ならあっと言う間の距離なのによ。
「疲れたか?」
「んー、大丈夫だよ!」
「間も無くだからな」
「うん」
燦々と注ぐ温かな陽の光の中を
もうじき見えて来る町に向かい
しっかりと手を繋いで歩いた。