第82章 契〜tigiri〜(伊達政宗/裏)
…ったく。
あいつは何度連れ去られりゃ気が済むんだよ。
だから警戒心が足りねぇって言うんだ。
昼間に迦羅が消えたと報せがあった。
月明かりのほとんど無い雑木林の中、その奥に有ると言う郎党の根城へと歩みを早める。
手下たちの働きで既に調べのついた
通称連れ込み寺。
女を攫っては弄ぶ格好の根城ってか。
くだらねぇことしてやがる。
だが今回ばかりは相手が悪かったな。
よりによって俺の女に手を出すとはいい度胸じゃねーか。
先へ進むと、少しばかり開けた所に
成る程、一軒の破れ寺ー。
蝋燭を灯しているのか僅かに灯りが漏れている。
戸に近付き中の様子に耳を澄ますと
既に事が終わったのか、満足気なガラガラ声が聞こえる。
「今日のは上玉だったな」
「今までにない味だったぜ」
「いつもなら此処で捨てるとこだが、こいつは惜しい女だ」
「へっ、俺たちが飽きるまで囲ってやるか」
お前等…殺られる覚悟は出来てるみたいだな。
男たちの気を惹くため、わざと足元に転がる枯れ枝を踏みつける。
パキッ…
「おい、誰かいるのか!?」
「………」
「チッ、誰だよ面倒くせぇ」
「やっちまうか」
刀を抜いて待ち構える俺の前に、予想通り汚らしい男二人、太刀を片手に踊り出て来る。
「ああ?何だてめーは」
「こんな夜更けに散歩かい?兄ちゃん」
「生憎俺らは女を抱くのに忙しいんでね」
ガハハハと下品な笑い声を出すそいつらに容赦なく刀を振り下ろす。
「ぐあああぁぁぁ!!!」
呆気なく飛沫を上げて絶える。
俺は転がるその身体を踏みつけ、中へと入った。