第69章 織姫の願い(第53章続編SS/家康)
「怪我、何で隠そうとしたの?」
さっきの行動が気になって聞いてみると
目を伏せた迦羅がもじもじと答える。
「それは…この間怪我した時も、またかって言う顔をされたから言いにくくて」
成る程ね、そう言うこと。
だって傷が残ったら大変でしょ、いつもそう言ってるのに。
軟膏を塗り終えると、表情を一変させた迦羅が笑顔で礼を言う。
「ありがとう家康」
その笑顔がすごくキラキラしてて
そんな顔されたら、こっちがどんな顔していいかわからなくなる。
「もう、怪我しないでよね」
「うん。迷惑かけないように気を付けるね」
「そうじゃなくて」
「??」
わからないようなキョトンとした顔をして見つめられたら、勝手にほっぺたが熱くなって来たんだ。
迷惑とかそんなんじゃない。
「あんたに傷が付くのは嫌なんだ」
「あ、女の子だからってこと?」
そう、いつもはそう言ってるけど…
それだけじゃないんだ。
手当の終わった手をまだ離せずにいる。
本当はもっと、あんたに触れていたい。
「そうだけど、あんたは特別だから。どんなに小さい傷ひとつでも、嫌なんだ」
「…………」
「何とか言ってくれる?」
「あ、えっと…ありがとう」
多分今、特別の意味を必死に考えてるよね。
やっぱり言葉、足りないか。
掴んだままの手の甲にそっと口付けを落とす。
「い、家康っ…」
「あんたの面倒なんか、幾らでも見てあげる。あんたのこと…好きだから」
「え……」
七夕に掛けた願い事
二人で叶えようよ。
あんたも俺も、同じこと書いたんだから。
「迷惑?」
「ううん。だって私も家康のこと好きだから」
「そう。でも、少しくらい仲良くなるだけじゃ、足りないからね」
「……うん」
あー…すごく恥ずかしい。
あんたも俺も、二人で真っ赤な顔して。
でもこれからだからね。
もっと、恥ずかしいことするの——。
完