第7章 天使の憂鬱(石田三成/微甘)
今しがた、信長様より数冊の書物を頂きました。
南蛮より仕入れた品を扱う商人より取り寄せたものだと。
信長様はたまたまだ、と仰いましたが
何と畏れ多きことでしょう。
異国のものとはいえ、あらゆる戦術書は知識の宝庫ー
手にした書物を開くのがとても楽しみです。
今日は会議もありませんし、読書日和ですね。
御殿に戻る時間も惜しいので、足早に書庫へ向かいました。
その途中の廊下で、菓子をのせた盆を持つ迦羅様に会いました。
「あ、三成くん!皆でお茶にするんだけどどう?」
今日も相変わらずいい笑顔ですね。
元気をもらえるようです。
何と可愛らしい。
でも、せっかくのお誘いですが…
「そっか、読書の時間なんだね」
迦羅様は察して下さいました。
「申し訳ありません、新しい書物なもので…」
「気にしないで。あ、ちゃんと休憩もしてね!」
そう言うと手を振って行ってしまいました。
こんな私の心配までして下さるとは、本当に優しい方なんですね。
迦羅様が優しいのは、私にだけではありませんが…
ほんわかとした気持ちを感じながら、また書庫へと足を早めました。
文机の前に腰を下ろし、懐から取り出した眼鏡をかける。
ワクワクとした気持ちが昂ぶり、信長様に頂いた書物を開く。
羅列する文章に添わせ視線を進めていくと
その文字が目に吸い付くように次々と頭に流れる。
これはまた斬新な。
成程、こういった策もあるんですね。
声には出ていないが、三成の中で感心や納得が飛び交う。
刻々と過ぎていく時間さえ全く感じない三成は、取り憑かれたように書物に釘付られていた。