第59章 戦国狂想曲3幕②(家康ルート)
チリンチリン…
開けた障子窓から吹き込む風が
心地良く風鈴の音を鳴らした。
窓際の壁に背を預ける俺と
その俺に抱かれてるあんたと。
横になったらって言ったのに、あんたが嫌だって言うから。
横向きに抱かれたあんたの頭が肩にもたれ掛かって、髪とか、あんたそのものから漂う甘い女の子の匂いが…
すごく、変な気持ちにさせるんだ。
「ねぇ家康」
「何?」
「…大好き」
「ー!?…急にそんなこと、言わないでよね」
「嬉しくないの?」
むくれた顔で覗き込まれるけど、嬉しく無い訳ないでしょ。
こんなに愛しいあんたが、好きって言ってくれてるんだから。
……そうじゃ無くてさ
「あんた、この状況わかってるの?」
「え?」
「すごく好きな子と二人っきりで、こんなにくっついてるって言う、この状況のこと」
言われて初めて意識したのかどうか。
俺を見つめる顔が、また少し赤くなったんだ。
「どうなの?」
「そ、それは…わかってるよ」
じゃあ、もっと困らせても、いいよね?
俺だってさっきから、どうしようも無い気持ちで、困ってるんだから…。
「じゃあさ…二人っきりで何するか、わかるよね?」
「えっと…それは……」
今更嫌だなんて言わないでよ。
言わせてあげないけど。
迦羅の手が、俺の着物の腰の辺りをキュッと掴んで
恥ずかしそうに首元に顔を埋めた。
「そんな可愛いことすると…どうなっても、知らないんだからね」
「……うん」
「じゃあほら、顔上げなよ」
ゆっくりと俺を見上げる迦羅に
もう言いようの無い愛しさが胸を突いた。
「ねぇ迦羅、もう一回好きって言って」
「…私は家康が好き。家康は?」
あんたには、俺の全部、教えてあげたい。
こんなに、あんたが好きなんだってこと。
「決まってるでしょ。すごく、大好き」
今日三度目の口付けー。
砂糖みたいに甘くて甘くて仕方無くて。
唇だけじゃない。
頬も耳も首筋も、あんたの全部が甘い。
「…んっ…い、家康……っ」
「駄目。もう、逃がしてあげない」
どんなに俺が天邪鬼でも
こんなに素直になれるんだ。
もっと…あんたが欲しいってね。
風邪なんか、俺がいくらでも…治してあげる。
完