第50章 三色の秘薬(家康・光秀・佐助/微甘)
ーそして光秀と家康は。
「あれ、光秀さん。どうしたんです?」
「家康か。何、忘れ物を届けに行くだけだ」
「奇遇ですね、俺もです」
「お前も、迦羅にか?」
迦羅の部屋へ向かう途中、廊下で二人が鉢合った。
「今日は珍しいですね、眼鏡なんて」
「ああ、やけに目が霞んでな。そう言うお前はどうしたんだ?」
「…俺は、外し忘れただけです」
「ククッ、見え透いた嘘を」
「…光秀さんこそ。本当は目なんか、霞んでないくせに」
「さぁ、どうかな」
そんな言い合いをしながらも、どちらも先を譲る事無く歩いて行く。
互いの頭の中には、迦羅のことだけだった。
昼間に見たあの迦羅の反応。
果たしてそれが如何なる意味を持っていたのか。
忘れ物を届ける口実と共に、こうして“それ”を身に付けたままでやって来たのだ。
迦羅の部屋の前。
「おい、居るか」
「はーい」
声を掛けたのは光秀。
返事を確認した二人は、無言で互いを見合った。
眼鏡の奥に隠した、闘争心を燃やしてー。
完