第49章 華〜hana〜(織田信長/裏甘)
「信長様」
ん…迦羅か?
「あの、信長様?」
何だ、どうした?
俺はまだ眠い。
「もう!起きて下さい信長様」
眠気の残る重い瞼を持ち上げると、すぐ目の前には迦羅の顔。
「すっかり夜が明けましたよ?」
「…そうか。それにしても、随分と近いな」
僅かに俺の顔を見上げる迦羅は、少しばかりでも動けば唇が触れそうな距離に居る。
「だ、だって、信長様が離してくれないから…」
急に頬を染める迦羅にそう言われてみれば、確かに俺の腕ががっちりとその身体を抱いていた。
「もう起きないと遅くなりますよ」
「そうだな」
口ではそう言ったものの、俺はどうやらこの腕を解く気が無いらしい。
寝起きの目を逸らすことなく目の前に居る迦羅を見つめる。
「やはり、目覚めた時に貴様が居ると言うのは良いものだな」
するりとそんな言葉が出て来た。
すると頬を染めたままの迦羅が照れたような微笑みを見せる。
「私もこうして…信長様の隣で目が覚めると、とっても幸せです」
「ああ、俺も幸せだ。貴様が側に居るだけでな」
「…でも信長様、本当にもう起きないと」
「そんなにこの腕を離して欲しいのか」
「そ、そう言う訳じゃないですけど…」
わかっている。
俺の仕事があると言いたいんだろう。
だが、残念だったな。
「今日は朝の仕事は無い」
「え?そうなんですか?」
「ああ。だからまだ、こうしていろ」
「…はい」
…………。
嬉しそうに笑う貴様が堪らなく愛おしい。
俺の腕に抱かれ、幸せだと言う貴様がー。
「迦羅」
「はい」
澄んだ目で見つめられれば、この鼓動が高鳴っていくばかりだ。
「やはりこうして居るだけでは足りんな」
「え?」
「もっと貴様を…愛してもいいか?」
そう問う頃には既に肩肘を着いて僅かに身体を起こし、下になった迦羅を見下ろしていた。
問いかけの意味を理解した迦羅が、それを受け入れるように小さく頷く。
「…はい」
桃色に染まる頬。
そしてこの胸がまた、一層大きな音を立てた。