第47章 ひとひらの純愛（徳川家康／微甘）

「ふーん…なるほどな」

「………」



秀吉さんは、公務で城を離れていたから、昨日の謁見の場には居なかった。

俺が一部始終を話すと、想像出来ると言う顔をして、深く頷く。



「で、何を悩んでるんだ？」

「わからないんです」

「わからない？」

「…ただ素直に謝ればいいのは、それはわかってるんです」





こんなに不器用な自分が
どんなにあの子を傷付けてしまうのか、わかってるつもりなんだ。



「恋ってやつはさ…」

一際優しい声を出して、秀吉さんが話し始める。


「相手があってのことだ。他人同士、通じ合わないことだってあるかもしれない」

「はい」

「最初からすべて上手くいく恋なんてないんだよ」

「…でも、もしかしたら、このまま…」



次第に弱気になっていく俺の心を見透かしたように、秀吉さんは溜め息をひとつ吐くと、今度は声を強めて話を続けた。



「ハッキリ言うぞ。俺が見る限り、迦羅はお前に振り回されて、それに必死に着いて行ってるように思える」

「………」

「迦羅がお前を追いかけることに疲れたら、その時はもう終わりだろうな。好き合ってる同士ってのは、一緒に歩いて行くもんなんじゃないか？」

「一緒に？」

「ああ、追うでも追われるでもなく、二人一緒にだ」

「そう…かもしれません」





きっと俺は、いつでもあの子が隣に居てくれてるって、勝手に思ってたんだ。

自分ばっかり先に進もうとして、それをあの子が追いかけてたなんて、何にも気付いてなかったのかもしれない。


いくら俺が我が儘でも
それをわかってくれてるって前提にしてた。

こんな風に人に言われて、初めて気付くなんて…馬鹿みたい。





「秀吉さん、ありがとうございました」

「早く行ってやれ」


微笑む秀吉さんに見送られて、今度こそ迦羅に逢いたくて、足早に秀吉さんの御殿を後にしたー。