第47章 ひとひらの純愛(徳川家康/微甘)
チュン、チュン…
ん……もう朝か。
結局昨日、迦羅は此処へは帰って来なかった。
一人で寝る布団がこんなにも広いと感じたことなんてないのに。
隣に迦羅が居ないだけで、朝が全然違うな…。
あの子も今頃、一人で起きてるのかな。
ぼーっと天井を見つめながら、昨日のことを思い出したー。
ーあれは昨日の午後。
今までも何度か安土城に謁見に来ている傘下国の大名が、国の情勢報告と言って城を訪れていた。
前々から大名は、織田家ゆかりの姫ってことになってる迦羅をいたく気に入っているみたいで、息子の嫁にと何度も話を持ち掛けていた。
だから昨日はその予防線として、ある対策が取られていたんだ。
「私が信長様の正室候補…?」
「そうだ。あくまでもフリだがな」
「…それはそうですけど」
「俺の正室候補とあればあやつも下手に食い下がることは出来ぬだろう」
「はあ…」
「何だその不満そうな返事は」
「でも織田家ゆかりの姫が正室でいいんですか?」
「ゆかりがある所の姫と言うだけで、織田家の姫ではない」
「そうですか…」
そんな話があって、一時的に迦羅はその役を演じることになった。
艶やかな着物を纏った迦羅は、すごく綺麗で。
たとえフリだとわかっていても、それが信長様のためだと思うと俺は面白くなかったんだ。