第44章 飴と鞭と甘い罰(石田三成/甘々)
ん…
目を覚ますと、私は部屋で横になっていた。
もう遅い時間なのか、外はやけに静か。
あれ、自分で寝たんだっけ…?
何だか記憶が曖昧で、布団に入ったことも覚えていない。
身体を起こしてあたりを見回す。
すると、布団の横に、あの反物が置かれていた。
そうだ…確か反物を取りに行った帰りに…
「迦羅様?」
昼間あったことを思い出すと、襖の向こうから三成くんの声。
「は、はい!」
「良かった、気がつかれたんですね」
いつもと変わらない笑顔の三成くんを見て、堪らなく申し訳なさが募った。
「あの、ごめんなさい!」
「どうして謝るんですか?」
「…気を付けるよう言われてたのに」
「でもこうして無事だったんですから」
私を責めるでもなく、優しく気遣ってくれる三成くん。
この人は、怒るってことをしないの…?
私は、約束を破ったのに。
「ですが…怖い思いをさせましたね」
「え?」
「最初から、私が一緒に行けば良かったんです」
「そんなっ!」
まるで一緒に行かなかった自分を責めるみたいに、三成くんは悲しそうな顔をして俯く。
違うよ、三成くん…。
悪いのは私でしょ?
「助けてくれてありがとう」
「当然ですよ。私は迦羅様の、恋人なんですから」
伸ばされた手が、一際優しく頬に触れた。
「ですが、確かここに…」
一瞬だけ怖い顔をした三成くんは、何かを思い出したように私の頬を撫で続ける。
「あの…三成くん?」
「あ、すみません。私としたことが」
私の声でパッと手を引っ込めた三成くん。
何だろう?ちょっと様子が…
「迦羅様、一つだけ手伝ってもらえますか?」
「あ、うん。手伝うよ」
にっこりと笑う三成くんに手を引かれて、既に暗くなった廊下を歩いて行った。