第44章 飴と鞭と甘い罰(石田三成/甘々)
「え、人さらい?」
物騒な話に思わず手元の針を止めた。
「そうなんですよ!最近多いらしくて」
「城下近辺で若い女を物色してるんですって〜」
「迦羅様も、気を付けて下さいね?」
「あ…うん。そうだね」
針子部屋では、女の子が集まるだけあって色々な話が出る。
何だか今日は物騒な話だけど…。
若い女の子を狙うって言っても
相手も人を見るだろうし…私は大丈夫だよね。
針子部屋での一仕事を終えて部屋に向かっている時だった。
「あ、迦羅様」
「三成くん。どうしたの?」
「いえ、最近噂になっているのですが…」
「人さらいのこと?」
「えっ?はい」
さっき皆から聞いたからね。
「何があるかわかりませんから、あまり城下には出ないほうが良いですからね」
私を心配してくれてるんだ、三成くん。
でも…
「実はこの後、お願いしてた反物を取りに行かなくちゃならないの」
「今日でないと駄目なのですか?」
「うん。今日中に受け取らないと、もう納期に間に合わなくて」
「困りましたね…私も今日は抜けられなくて」
きっと、心配だから一緒にって考えてくれてるんだよね。
でも三成くんにも仕事があるんだから。
「まっすぐ反物屋さんに行って、まっすぐ帰ってくるよ!」
「ですがその間に何かあっては」
「うーん…でも行かないと」
「では誰かお供させましょう」
用意が出来るまで待っているように言われ
私は部屋に戻った。