第42章 愛慕う姫と月兎(上杉謙信/甘々)
「ん…んっ、…ふ」
何度も何度も長い口付けを交わす間
それまで迦羅の膝の上で丸まっていた兎が、軽やかに下りて庭へ跳ねていく。
そして途中でこちらを振り返った。
大きな月を背にした白兎ー。
「お前も、月へ帰っても良いのだぞ」
「またそんな事を…寂しくなるじゃないですか」
「ならばその寂しさを、俺が埋めてやるだけだ」
繰り返される熱い口付け。
いくらこうしても伝えきれない程の愛。
一生かかっても、俺はお前を感じ足りないかもしれない。
「愛している…迦羅」
「私もです、謙信様」
二人の愛の囁きを確認したように
真っ白な兎は庭の奥へと跳ねて行った。
「まだ夜は長いな」
「え?……わっ!」
迦羅の身体を軽々と持ち上げ、部屋へ戻る。
褥に運び下ろすと、もうどうにも止まらなかった。
迦羅のすべてに触れたくて、愛したくて、始まったばかりの恋のように心臓が激しく鳴る。
更けていく夜と共に
俺も愛する迦羅の中へと沈み込んでいったー。
チュン、チュン
薄い明かりが射し込み始める朝ー
抱き合って心地良い夢を見る二人の間で
あの白兎もまた、幸せそうに丸くなっている。
完