第4章 嘘の代償(豊臣秀吉/甘め)
俺は迦羅の手を引いたまま、広間を離れて迦羅の部屋へ来た。
送り届けるだけのつもりだったかは自分でもわからない。
後ろ手に襖を閉め、湧き上がる想いのままに迦羅の身体を強く抱き締めたー。
「…なんで…あんなこと言ったの…っ」
迦羅は腕の中でまだ泣いていた。
泣かせるつもりなんてなかった。
「俺は、ずっと前から…お前のこと妹だなんて思ってなかった」
だけどそれを、いけないことだと必死に言い聞かせてきたんだ。
「っ今日…秀吉さんの…御殿に行ったの…」
「ああ、知ってる」
「昨日のことを…謝りたくて」
「来た時に、聞いたんだろ?俺が言ったこと」
「…っ、妹でしかないって言った」
「そうだな」
また泣き始める迦羅の声が胸に刺さる。
そっと頬を挟み、流れる雫を指で拭う。
「あんなの嘘だ。照れ臭くて、誰にも悟られたくなくて、自分に嘘をついてたんだ。まさか迦羅が聞いてるなんて思いもしなかった」
次第に迦羅の涙は乾いていく。
濡れた瞳がいつにも増して綺麗で、愛おしい。
「私も…ずっと秀吉さんが好きだった。でも、好きだなんて言ったら、秀吉さんが…離れていくかもしれないって」
「でもそれでも、お兄ちゃんみたいに優しくされるだけじゃ足りなくなって…」
真っ直ぐに届いてくる言葉と、色付いた迦羅の頬に触れる熱に、俺の余裕はなくなった。
「兄妹ごっこは、もう終わりだな」
ゆっくりと迦羅の柔らかな唇を食み、塞ぐー。
熱を増していく身体が止められなくなる。
「んっ…っ」
一旦唇を離すが、まだ足りない。今度は強引に、深くまで口付けると、迦羅が俺の首に腕を回し、それに応じた。
迦羅の腰を抱く腕に自然と力が入る。
唇を解き、耳もとへ…首筋へ…口付けていくと甘い声が漏れる。
「…っあぁっ、んっ」
そのまま華奢な身体をゆっくりと押し倒し、組み敷いた。
「…明日になったら、きっと皆にからかわれるよ…」
柔らかに微笑みながら、迦羅は小声で言う。
「そんなの、構わない」
何度言ったっていい。お前に惚れてるってな。
暴かれた白い肌、乱れた吐息、甘い声、俺を求める表情…
その全ては俺だけのものだからー。
完