第34章 琥珀色の蜜事(明智光秀/裏)
「どこに行くんですか?」
「さぁな、どこだと思う?」
「わからないから聞いてるのに…」
「そう心配するな」
山の色が濃く、鮮やかな新緑の季節ー
私は光秀さんの馬に乗せられ、田舎道を進んでいた。
長い長い片想いが実り、光秀さんと恋仲になったのはつい二ヶ月前。
突然出掛けると言われて連れて来られたけど、行き先もわからない。
光秀さんを攻略するには時間がかかりそう。
ううん、一生出来ないかも…。
「っ!?」
腰にグイッと強く腕が回される。
「み、光秀さんっ…」
「呆けていると落ちるぞ」
覗き込む光秀さんの顔は相変わらず薄笑いだけど、逞しい腕に抱かれる腰が甘い痺れを感じる。
「何か期待したか?」
「し、してません!」
いつの間にか光秀さんの意地悪が嫌じゃなくなって…それどころか、意地悪されるのも嬉しいとさえ思ってしまう。
光秀さんの身体…あったかいな。
心地の良い揺れも手伝って、私は光秀さんの胸に寄りかかる。
微かに鼻先を掠める程良く甘い光秀さんの匂いで、何だか瞼が重くなっていく。
「少し走らせるぞ」
「うん…」
「眠いのならば寝ていろ」
「落とさないで下さいね」
「さあ、どうかな」
そんなこと言いながらも片腕がしっかりと抱いていてくれる。
不安定な馬上で、私は安心して光秀さんに身を預けた。