第3章 赤い微熱(真田幸村/微甘)
唇か離れると、お互い真っ赤になっていることに気付く。
「…こんな綺麗な所にきて、何やってるんだろうね」
迦羅がふふっと笑い出す。
それもそうだ。
此処を見せたいと思って連れてきたはずなのに、景色そっちのけになってるな。
「少し歩こうよ」
迦羅に促され、濃い桃色の絨毯の中をゆっくり歩く。
天気も良く、風も温かい、そこに迦羅の愛らしい姿があると思うと、不思議と幸せだと感じる。
俺に色んな感情をくれる迦羅が…幸せそのものなんだな。
一通り歩き、湖の畔に佇む茶屋で腰を下ろす。
大きな柳の木のたもとの、こじんまりした茶屋だ。
人の良さそうな小柄な店主が顔を出した。
「こんなとこですが、ゆっくり寛いで下さいね」
熱々の茶と団子を丁寧に出し、店主は湖を見つめた。
「いやー、城下から離れたこんなところで茶屋を開く気は無かったんですがね…」
笑いながら店主は話し始めた。
「夢に出たんですよ、美しい天女が」
「水辺に茶屋を建てろとね。ふふふ、笑っちゃうでしょう?」
夢に、天女…
まるで信玄様が言いそうな台詞に思わず可笑しくなる。
迦羅も同じことを考えていたようで笑い出した。
「ふふっ、信玄様みたい」
その後店主を交え他愛ない話しに花を咲かせ、陽が傾く前に茶屋を出た。
帰り道も迦羅は疲れた様子も見せず、手を繋いで歩く。
「今日はありがとう。素敵な一日だったよ!」
「そうか、良かった」
空いてるほうの手で優しく頭を撫でる。
城門までやってきた時、俺はふと足を止める。
「どうしたの?」
「今日のお前の着物、似合ってるぞ」
「え…っ?気付いてないと思ってた…」
意外だとでも言いたげな顔だな。
美しい朱色に可憐な小花柄。
白とか淡い色もいいけど、赤も似合うんだなお前は。
「ありがとう」
お礼を言う唇にそっと掠めるように口付けた。
「 脱がせる楽しみが出来た」
耳元で囁いてみせると、相変わらず真っ赤になってしまった。
照れてる余裕なんかなくしてやるからなー。
そう思う俺もまた、胸に僅かな熱を感じていた。
完