第25章 夜の姫はご乱心!?(織田軍/共通)
色濃い夜の帳が下りた頃、安土城の広間には賑やかな声が響いている。
庭の桜は散り始めたが、散っていく花もまた美しい。
そんな風景の中で、安土城に集う武将達は、一足遅い花見…という名の宴会を開いていた。
迦羅の提案で、今日は皆晴れ着姿で集っている。
普段は特別おめでたい席でしか着用はしないが、せっかくだからと皆で合わせることになったのだ。
武将達の晴れ着姿に、迦羅は嬉しそうに目を輝かせている。
たかが着物といえど、新鮮に映るのだろう。
今日は、広間から散りゆく桜が見えるようにと、開け放した襖のそばに各々の膳が並べられて半円を描いている。
勿論、窮屈でない程度に。
迦羅は忙しそうにそれぞれの所へ行き、順番に酌をしている。
「迦羅、酌ばかりでは貴様が楽しめぬだろう」
信長が声を掛けてやると、ハッとした顔を見せた。
「そうだぞ。お前は世話役で居るわけじゃないんだ」
秀吉もあとに続く。
「お前も呑んで、今日は楽しめ」
「うん!ありがとう」
瞬時にパァっと大輪の花が咲いたような明るい笑顔に、皆が迦羅に釘付けとなる。
笑顔もそうなのだが、迦羅も今日は晴れ着姿だ。
この上なく良く似合っている。
だが…
普段と違い抜き襟をして着付けられた色香ある姿に、武将達は皆、目を奪われている。
「おい、こっち来いよ」
まず声を掛けたのは政宗だった。
「今日もたくさん作ったぞ。好きなだけ食えよ」
「うん、すごいね政宗!」
盛り付けまで完璧な料理に感嘆の声を上げながら、幸せそうに料理を食べていく。
本当いい顔して食うな、見てて飽きねぇ。
…しかし今日のこいつは綺麗だ。妙に胸がざわつきやがる。
「いつでも作ってやるよ」
平静を装いながらその肩を抱き、わざとらしく耳元まで唇を寄せる。
「うん、あ、ありがとう」
それを見た光秀が今度は迦羅を呼ぶ。
「料理を食べたのなら、次は酒を呑め」
隣へやってきた迦羅に盃を渡し酒を注いでやる。
「何だかいい香りですね」
コクリ、と酒を喉へ通すと、また迦羅は笑顔になった。
「美味いだろう?」
「はい、とっても美味しいです!」
それから何杯も、光秀も迦羅も互いに酌をしながら呑んだ。