第22章 愛は二人だけの世界(上杉謙信/甘々)
大事な会議の予定を、変更させてしまった。
私も上半身を起こし、謙信様と向かい合う。
「ごめんなさい。私の我が儘で…」
離れたくないのは本心だけれど、大事な人の仕事を邪魔するなんて。悪いことをしてしまった申し訳なさが募る。
「何を謝る必要がある」
「でも…」
すっ、と謙信様の腕が伸びて、私の頬を撫でる。
「俺は真実を言ったまでだ」
柔らかく微笑む色違いの目は、私をあやすように優しい。
「それとも、お前は違うのか?」
「え?」
「お前は…恋の病ではないのか?」
ふと謙信様の顔が曇る。
不安を抱いたような憂いの表情に、鼓動がトクンと鳴った。
恋の病なんて可愛いものじゃない。
きっと、もっともっと欲深くて、どうにもならない病気なの。
「迦羅」
答えを急かすように名を呼ばれて、一気に愛しさが溢れ出す。
勢い良く謙信様に抱きつくと、バランスを崩した謙信様を押し倒すような格好で布団に倒れる。
「これがお前の返事か?」
悪戯っぽく笑う謙信様を見下ろし、速まりすぎた鼓動を感じるけれど、不思議と恥ずかしさはなかった。
「私は、不治の病に冒されているんです」
「奇遇だな、俺もだ」
いつになく優しい笑顔に刺激されて、自分からそっと口付けた。
触れ合うだけのつもりが、謙信様の手に頭の後ろを抑え込まれて、口付けはどんどん深くなっていく。
息が苦しいけれど…それもどうでも良くなる。
唇を重ね合わせたまま、謙信様が器用に身体をくるりと反転させ、今度は私が下になった。
唇を離した謙信様に見下ろされると、何故か堪らなく恥ずかしくなっていく。
「謙信様…」
「お前の我が儘など、いつでも聞いてやる」
そう言うと着物の襟に手をかけながら、鎖骨を舌でなぞる。
「んんっ…」
首筋に触れる謙信様の柔らかな髪がくすぐったい。
「ま、待って…!」
思わず謙信様の肩を押し返そうとしたけれど、捕まえられた両手が布団に縫い止められた。
「だめだ。待てない」
目元を赤らめた謙信様が余裕のない声を出す。
やけに色っぽい表情に、それだけでおかしくなりそう…
謙信様と、初めてのズル休み。
次第に陽が昇っていくなかで、私たちの熱も上がっていく。
今だけは…謙信様と二人きりの世界に溺れていたいー。
完