第20章 君へ捧ぐ謌(徳川家康/甘め)
空いてるほうの腕で頭を抱き寄せ、髪に顔を埋める。
ほのかな甘い香りが心地良い。
「私ね、恋したのが家康で良かったよ」
「当たり前でしょ」
「え?」
「俺たちは、恋する運命だったの」
言ってて恥ずかしいけど、本当にそう思うんだ。
目の前の迦羅は目を瞬かせているけど、違うとは言わせないよ。今更この運命からは逃げられないんだから。
「…嬉しい」
そう言って少しだけ桃色に染まった顔をほころばせた。
…もう、我慢してあげない。
そのまま迦羅の頭を引き寄せ、甘い甘い口付けをする。
言葉にしきれない想いを伝えるように、何度も。
唇を離すと、蕩けかけた迦羅の瞳があった。
「外でこういうこと、ダメなんだっけ?」
吐息がかかる距離で意地悪を言ってみる。
「誰も見てないから…いいの」
おかしな子。
誘われるように、また、その柔らかな唇を奪う。
漏れる吐息も、着物にすがりつく手も、次第に熱を上げていく身体も、心も全部、俺だけのもの。
口付けだけじゃ足りない。
もっとあんたを…全部で感じたい。
「そろそろ、帰ろう」
これ以上はもちそうにないからね。
全部あんたのせいだけど。
こんなにも恋情に溺れるなんて、昔の俺が見たら、笑うかもしれない。
だけど、溺れる相手が迦羅だったら何も怖くない。
これから、俺と同じように迦羅にも、もっともっと俺に溺れてもらわなくちゃならないね。
心も身体も何もかも全部。
迦羅、いつまでも、愛してる。
これからもっと、愛してあげる。
完