第17章 絡まる絲(真田幸村/甘め)
「やっと姫が俺の元へやって来るんだな」
「あんたのとこに来る訳じゃねぇよ」
城門で俺は、今にやって来る迦羅を待っていた。
隣には艶っぽい顔して浮かれてる信玄様も、一緒になって今か今かと到着を待ってる。
信玄様の女好きは今更何も言う気はねぇけど、迦羅に色目を使うのはどうも気に入らねぇ。大人の余裕とかいうやつで、かっさらわれたんじゃたまんねーし。
「あ、迦羅!」
信玄様の上げた声にバッと顔をあげるが、誰も居ない。
隣で笑う信玄様。
くそっ、騙された。
「そんな顔をしていたら、姫が悲しむぞー」
「うるせーですよ」
そうやって信玄様に茶化されてると、籠がやって来た。
城門手前に停められた籠の簾が開き、迦羅がおりてくる。
薄紅色の可愛らしい小花柄の着物、丁寧に梳かされた髪、久しぶりに見る柔らかな笑顔。
それだけで、もう俺の胸はいっぱいだった。
「やあ迦羅!どれだけ待ったことか!」
信玄様が抜け駆けて、いきなり迦羅を抱き締める。
何やってんだよ!!
気安く触るんじゃねぇ!
「あ、ありがとうございます、信玄様」
笑顔で礼を言いながらも、迦羅はやんわりとその身体を押し返す。よし、わかってるようだ。
「幸村、呼んでくれてありがとう」
今度は俺に視線を向けて、照れくさそうに礼を言う。
「おー」
可愛くて可愛くて、真っ直ぐ見てられない。
「おい、幸。何だその素っ気ない態度は」
「別に…」
「とりあえず入ろう。謙信のやつも待ってる」
信玄様に促されて、歩き出す。
しかし、信玄様は迦羅の横にぴったりと寄り添ってる。
油断ならねぇ。
後ろから迦羅の手に自分の手を絡めた。
驚いた迦羅が振り向き、目が合う。
「あんまりくっつくなよ」
信玄様に聞こえないように小声で言って、距離を空けさせる。
わかっていると頷いた迦羅は、絡めた手をきゅっと握り、また可愛らしい笑顔を見せた。
久しぶりに顔見ただけでこれだもんな
大丈夫かよ、俺。