第5章 暗黙のルール(マルコ)
「…面目ねェ」
頭を垂れるサッチにナースは呆れたように溜息を吐いた。そして最後に次は無いわよと二人に釘を刺す。
「まぁあの子にもお灸を据えといたから改善してくれるといいけど…じゃあ私はもう行くから何かあったら呼んで頂戴」
カツカツとヒールを鳴らしナースは去って行く。その様子はまさに嵐が去って行くようだった…静けさだけが残る中、二人は顔を見合わせた。
「…あのマシンガントークはワザとって事か」
「まったく…白ひげのナースは頼もしいよい」
「違いねェ」
苦笑いした二人は今後の対策はどうするかと頭を悩ませた。
一応親父からユナの面倒見を頼まれてる手前、今回みたいな事は二度とない様にしなければ。アルコール中毒で死なれちゃ洒落にならねェ…そもそも仲間を見殺しにする訳にもいかない。
さて、どうしたものか。
「…もしかして姫さんの悪酔いの原因も……」
頭を悩ます二人だったが、不意に呟いたサッチにマルコは合点がいった様子で顔を上げた。
「あり得るよい、酒の吸収が良過ぎていつも以上に酔ったのか…」
「もしそうならちゃんと飯を食ってれば問題ねェって事だな」
顔を見合わせて頷く二人。
ユナの悪酔いも、急性アルコール中毒も、飯を食べてれば防げるかも知れない。
原因は分かった解決法も分かった、後はどう実行するかだ。
飯はちゃんと食えと本人に言っても、きっとあいつは何時もの様に忘れてたと言って食べないのは目に見えてるから駄目だ。
だからと言ってサッチにユナの食事管理を任せようにも、1600人近く在籍しているモビー号ではずっとは難しいだろう。
一層の事理由を言ってしまえば早いが、それじゃああいつが酒を飲まねェ確率の方が高くなる…ストレス発散出来る場を無くす訳にもいかねェ…。