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【YOI・男主】愚者の贈り物

第3章 第2日目・男子SP


「買い被り過ぎや。実際僕、皆にも嫉妬の炎がメラメラなんやで。あーあ、勇利みたいな体力あったらなーとか、健坊の感性欲しいなー礼之くんの若さが憎いぃ!なーんて♪」
おどける純に、一同は愉快そうに笑った。

その後、会場入口付近で待っていた南と礼之のコーチや家族達に会うと、4人は改めて明日の健闘を誓い合った。
「今日は疲れたやろ。健坊も礼之くんもホテル帰ったらゆっくり休み」
「皆さん、お休みなさい。また明日よろしくお願いします」
「ここまで来たら、皆で四大陸ば目指しましょう!あ、アレクくんは世界Jrやけど」
「そうだね、頑張ろう。純、昔とスケーティングの美しさが全然変わってなかった。今の純なら四大陸も充分狙えるよ」
勇利は純にそう呼びかけたが、
「……そうやな。そうやったらええなあ」
少し間を置いてから応えた純の一瞬だけ見せた寂しそうな表情に、勇利は僅かに眉根を寄せた。

南達と別れた勇利と純は、互いに滞在先が偶然同じホテルである事が判ったので、そのまま一緒に歩き始める。
土地勘のある純の後ろを少し遅れて歩いていた勇利は、決して華奢ではない筈の彼の背中が、そのまま冬の夜に溶け込んでしまいそうな錯覚をおぼえた。
再会した時からずっと胸の奥に引っかかる何かを感じていた勇利は、気がつくとその背に呼びかけていた。

「──純!」
「ん?何?」

いつもの様子で振り返った純だったが、勇利の眼差しに気づくと先ほどと同じような表情になる。
「…ホンマは、全部終わってから話そう思うてたけど、そういう訳にもいかんみたいやな」
「純。君は…」
「薄々気付いとると思うから、やっぱり勇利には先に言うとくわ。……明日のフリーが、僕の競技生活最後の舞になる」

予感はしていたものの、改めて本人の口から告げられた言葉を聞いて、勇利は眼鏡の奥の瞳を感情のまま揺らめかせた。
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